ダニング=クルーガー効果とは、能力が低い人ほど、自分を過大評価するという人間の心理傾向です。
逆に、能力が高い人は、自分を過小評価します。
トップアスリートや、ノーベル賞の科学者でさえも、謙虚な言動をよく目にするでしょう。
ダニング=クルーガー効果は、もともと有名な認知バイアスでしたが、最近になってビジネスの記事や、セミナーでも見かけるようになりました。
ほとんどの場合、このバイアスは、悪い心理傾向として紹介されています。
しかし、それは間違いです。
「認知バイアス集」第一回目は、この誤解されやすいダニング=クルーガー効果について解説します。
目次
ダニング=クルーガー効果とは?
この図のように、人間は「実際の評価」が低い人ほど、「自己評価」が高い傾向にあります。
スキルが低いグループは、自分の能力を平均以上だと思い込んでいるのです。
しかし、能力のあるグループになると逆転します。
実際の能力よりも、低く見積もるのです。
- 能力の低い人ほど、他人より優れていると思い込む
- 能力の高い人ほど、自分はまだまだ未熟と思い込む
このような心理傾向は、人間なら誰にでもあります。
また、ジャンルは問いません。
スポーツ、学問、仕事、笑いのセンスにおいても見られる傾向です。
この心理傾向を発見したのは、アメリカの心理学者ダニングとクルーガーです。
二人の名前から、ダニング=クルーガー効果と名付けられ、世の中に広まりました。
自己評価が高いのは悪くない
自分を過大評価するのは、悪いことのように聞こえます。
実際にダニング=クルーガー効果は、恥ずかしく、悪いことのように言われています。
しかし実際は、成長において有利に働きます。
自己評価ができないだけ
- 自分を過大評価しているから、能力が低いのではありません。
- 能力が低いからこそ、自己評価ができないだけです。
まずは「正しい自己評価は、成長に必要か?」を問う必要があります。
心理学の研究をみると、それは「いいえ」です。
「小さな池の幸せな魚」という論文があります。[※]
自分の能力が他人より劣っていると、挫折しやすいのです。
挫折とは、リタイヤです。
多少はうぬぼれていた方が、努力するモチベーションになって良いのでしょう。
目標達成の可能性があれば頑張れる
目標を達成する可能性があればあるほど、努力することができます。
可能性がモチベーションになるのです。
これを裏付ける研究報告があります。[※]
この研究では、実験に参加した生徒の学年が低いほど、目標に向かって努力できました。
「学年が低い」ということは、残された時間が多く、目標が達成できるチャンスを感じるのでしょう。
以下の記事では、さらに詳しく解説しています。
努力の認知バイアス
前述のように、自己評価が正しいと、リタイヤする可能性があるのです。
そして、高い自己評価は「目標が達成できるかもしれない」という夢を与えます。
人間は進化の中で、ダニング=クルーガー効果を知らないうちに利用していたのでしょう。
周囲が気をつけるべきこと
これから成長する人に、「能力が低い」という現実を叩きつけてはいけません。
これは、最悪の行為です。
前述のように、モチベーションが下がり、リタイヤに繋がるからです。
先輩やコーチであれば、まずは「やる気」を育てる工夫を考えることです。
過程を褒める
結果よりも、過程を褒めることが大切です。
「過剰に褒める」というのは、避けてください。
何もしていないのに、褒めると、自分が大好きになってしまうのです。[※]
「努力しなくても、褒められるのが当然」という思い込みを生みます。
やることをしてないのに、承認欲求だけを求めてしまうのです。
仕事で成果を出すよりも、上司に気に入られる方が簡単かもしれません。
ラクをして、評価される方法ばかりを考えてしまいます。
自分が気をつけるべきこと
ダニング=クルーガー効果は、モチベーションに変換されるなら、良い心理です。
しかし、悪いパターンもあります。
それは「見ただけで、できる気になる」という心理です。
能力がないのに、プライドだけが高くなってしまうのです。
実際にやってみると、もちろん上手く行きません。
こうして、自己肯定感が下がってしまうのです。
Youtubeで見ただけで、できる気になっていませんか?
以下の記事にて、詳しく解説しています。
実際にYoutubeのコメント欄を見ると、疑わしい人であふれています。
ダニング=クルーガー効果を防ぐ方法
誰であっても、ダニング=クルーガー効果によって、自分を過大評価する傾向があります。
もし、正当で現実的な評価を知りたい場合は、どうすれば良いのでしょうか?
友人や同僚に、このように聞いてください。
- 「お世辞は抜きで、正直に答えて欲しい」
最も確実なのは、専門家に聞くことです。
ただし、様々な要因を考えてください。
例えば、時間軸です。
トレーニングして、1年目と3年目の人間では、もちろん能力が違います。
同じ時間軸の人と、比較しましょう。
何かと比較して、可視化することで、はじめて正しい評価ができます!