選択肢過多とは、「選択肢が多いほど、選べなくなる」という認知バイアスです。
情報過負荷とも言います。
あなたが24種類と、6種類のジャムを使った実験を聞いたことがあれば、注意してください。
現在、このバイアスは、「選択肢が多くても、悪影響になるとは限らない」という評価です。
したがって、ビジネスの戦略に取り込むには、慎重な判断が必要です。
この認知バイアスが有名になったのには、理由があります。
心理学の実験によって、「選択肢は多い方が良い」という常識と、逆の結果が出たからです。
今回の認知バイアス集は、ちょっと注意が必要な選択肢過多について説明します。
目次
24種類と6種類のジャムを選ぶ
2000年の有名な研究報告により、選択肢過多のバイアスが見つかりました。[※参考文献1]
この実験では、数時間ごとに24種類のジャムと、6種類のジャムを入れ替えながら、店頭に置きます。
多くの人は、24種類のジャムを見て、足を止めました。
たくさんのジャムが目立っていたからです。
しかし、売れたのは6種類のジャムでした。
6種類のジャムは、24種類のジャムと比べて、10倍の数が売れました。
このジャム実験により、選択肢過多のバイアスが見つかりました。
なぜ選択肢が多いと決断できないのか
「このジャムを買う」という意思決定を下すのに、脳は労力を使います。
種類が多すぎると、混乱します。
脳には、価値を評価する領域と、意思決定を下す領域があります。[※参考文献2]
この2つの領域で、「ジャムを買う」という決定をします。
8から14種類が理想的
脳科学の研究によると、理想的な選択肢の数は、8から14種類のようです。[※参考文献2]
12種類の前後で、脳の活動が最も活発だったからです。
なぜ、選択が少なすぎても、ダメなのでしょうか?
それは選ぶこと自体が楽しいからです。
この研究は、選択肢が多いほど、決断ができない理由を分かりやすく説明しています。
- 選べないと楽しくない
- 選択が多すぎると、脳が疲れてあきらめる
このバイアスは本当にあるか?
選択肢過多のバイアスは、私たちにとって、心当たりがあるものです。
例えば、ラーメン屋さんです。
ラーメン店が中華料理以外も扱っていると、どうでしょうか?
メニューが多いより、「うちは塩ラーメンひとつしかない」というラーメン店の方が、信頼できます。
また、パソコンやクルマ選びでは、あまりにも選択肢が多く、意思決定に疲れます。
実際にMacを購入する場合、デスクトップとノートを視野に入れると、選ぶことができないほど迷います。
そのため、ビジネスに応用することができます。
しかし、注意してください。
選択肢過多のバイアスは、議論が分かれています。
実験の再現ができない
有名なジャム実験は、バイアスがありました。
そのため、バイアスを取り除いて、追加の実験が行われています。
しかし、上手く再現できていません。
これは「選択肢が多くても、悪影響になるとは限らない」ということを意味します。
食品に関しては、明確な好みを持っている人ほど、多い選択肢は、良い効果を生みます。
たくさん選べる成功例
例えば、紅茶を販売するルピシアがあります。
店頭に行けば、数百種類の紅茶があることに、圧倒されるでしょう。
毎回、別のハーブティーを買ったり、新商品を試したくなる心理になります。
(店舗に行かれることをオススメします)
ネットショップでも、品揃えが重要です。
スマホのケース販売であれば、少ない種類で勝負するより、数を揃えることが一番売上に繋がります。
複数の研究をまとめて評価すると
選択肢過多は、本当に起こるのでしょうか?
研究者らは、選択肢過多に関する論文をまとめて、総合的な評価を行いました。[※参考文献3]
やはりジャム実験は、精度が低いようです。
ビジネスに選択肢過多を利用する場合、注意してください。
この認知バイアスを信用しすぎると、失敗する可能性があります。
選択肢過多をビジネスに使うには?
2015年になり、さらなる論文の評価が行われました。[※参考文献4]
この研究によって、選択肢過多が起こるケースと、起こらないケースが見つかりました。
選択肢過多は顧客による
はじめてジーンズを買う顧客がいます。
ジーンズ専門店に行けば、パンツスタイルだけでも、数えきれません。
スキニータイプ、リラックスタイプ、ジッパー、ボタンなど、選ぶのは困難です。
この場合、楽しさよりも、ストレスを受けてしまいます。
しかし、ジーンズが好きな人は、どうでしょうか?
この場合は、選択肢の多い方が有利です。
趣向品は、選択肢を増やすと良い
研究によると、趣向品ほど、多い選択肢が好まれます。
逆に、生活必需品では、選択肢過多が起こりやすくなります。
また、ワインのように、誰もが知識を持ってない分野では、選択肢を増やした方が、より良くなります。
結論
心理学がビジネスに役立つことは、多々あります。
しかし、すべての心理学が役立つかは、疑問です。
品揃えに悩んでいるなら、心理学よりも、ビジネスの成功例と失敗例を学んでください。
iPhoneやMacは、これ以上バリエーションが増えると、私たちは戸惑うかもしれません。
一方で、たくさんの紅茶が選べる店から、学ぶこともできます。
顧客をコントロールしようとすると、失敗する可能性があります。
心理学に頼り過ぎないことも大切です。
バランスをとって、意思決定をしてください。
参考文献
- When Choice is Demotivating: Can One Desire Too Much of a Good Thing?
- Choice overload reduces neural signatures of choice set value in dorsal striatum and anterior cingulate cortex
- Can There Ever Be Too Many Options? A Meta-Analytic Review of Choice Overload
- Choice overload: A conceptual review and meta-analysis