スキルは、見ただけで習得できません。
心理学の研究は、Youtubeでの学習が全く身につかないことを発見しました。[※]
- 文献:Easier Seen Than Done: Merely Watching Others Perform Can Foster an Illusion of Skill Acquisition
ここで問題なのは、参加者が「できる気になる」ということです。
つまり、自信過剰になるのです。
昔から「見るとやるでは大違い」と言いますが、まさにその通りです。
目次
Youtubeで学習した気になる
前述の実験では、「ジャグリング」「ダーツ」「テーブルクロス引き」などのスキルが試されました。
参加者たちは、Youtubeを見れば見るほど、「自分にもできる」という気になりました。
しかし、実際に技術力は身についていませんでした。
これは、人がうぬぼれてしまう理由です。
見よう見まねでは、「体の動きがついていかない」ということです。
しかし、見ただけで体も動くだろうと、予測してしまいます。
私たちは、この錯覚を知る必要があります。
Youtubeの学習効果
Youtubeの学習には、映像と音声があります。
テキストや図版よりも、頭の中で理解しやすくなります。
しかし、頭の中で完結したままでは、身につきません。
これをやりすぎると、研究が示すように「うぬぼれ」が発生します。
スポーツに限った話ではありません。
実際に問題を解いて、繰り返すことで学習効果が得られます。
簡単に見えるゲームのスーパープレイ
Youtubeでゲームのプレイ動画を見ると、上手い人のプレイほど、簡単に見えてしまいます。
実際は、かなりの訓練が必要です。
ゲームのスーパープレイは、手軽に「うぬぼれ」を実感することができます。
成功パターンしか見ないので、単純な操作でクリアできそうに見えるのです。
自己肯定感が下がってしまう
前述の実験には、続きがあります。
Youtubeを見た人たちは、実際に「ジャグリング」「ダーツ」「テーブルクロス引き」などを行いました。
もちろん、上手くできませんでした。
そして「うぬぼれ」という状態になっていたので、できない自分に失望したのです。
最初から「できない」と思って参加するよりも、「できる」と思って参加する方が、ショックを受けるのです。
うぬぼれは悪いことではない
うぬぼれは、本当に悪いことでしょうか?
それは「いいえ」です。
なぜなら、少しはうぬぼれていないと、今度は挫折が待っているからです。
心理学の研究は、「周囲のレベルが高いと、パフォーマンスにも悪影響になる」という心理効果を発見しました。[※]
この論文のタイトルには、「小さな池の幸せな魚」と付けられています。
つまり、「小さな池にいれば、小さい魚でも、自分が大きく見えてしまう」ということです。
レベルの低い環境でうぬぼれているのです。
しかし、このうぬぼれは、パフォーマンスを向上させる要因となります。
そして、ハイレベルな環境に移動すると、あまりのできなさに、あきらめてしまうのです。
こうなると、パフォーマンスが悪化します。
初心者は、多少のうぬぼれがあっても良いのです。
自分はできると信じて、努力します。
周囲ができることは、ただひとつです。
それは応援です。
間違っても「レベルの高い人」と、比べないでください。
初心者ほど、うぬぼれる
能力の低い初心者は、自分ができる人間だと思い込みます。
そうしないと、挫折するからです。
先ほどの「小さな池の幸せな魚」という論文と同じです。
「初心者がうぬぼれる」という現象には、名前があります。
ダニング=クルーガー効果という有名な認知バイアスです。
以下の記事でも詳しく説明しています。
Youtubeに頼らない
もし、あなたがYoutubeを見て何かに興味を持ったなら、早い段階でチャレンジするのが良いでしょう。
動画を何度も見ると、うぬぼれるだけでなく、挫折をする可能性があります。
「見る」と「やる」のバランスが大事
スポーツに限らず、様々な職業でも、「見る」と「やる」は両方とも必要です。
あまりにも「見る」が多いと、これらの研究が示すように、悪い影響があります。
結局のところ、「見る」と「やる」のバランスが大切です!