あきらめない人は本当に成功するか?

あきらめる? あきらめない?

地下で穴を掘っている2人。
ひとりは、金塊(成功)の寸前で、あきらめて帰ります。

あきらめなければ成功する

このイラストは有名です。見た人も多いかもしれません。
あきらめてはいけない」という意味です。

このイラストは、本当でしょうか?

ビジネスの世界では「あきらめようと思った時が、あきらめてはいけない時」と、よく言われます。
しかし、心理学では逆のパターンがあります。
それは「現状維持バイアス」、「処分効果」や「サンクコストの誤り」と呼ばれるものです。

認知バイアスが「あきらめさせない」

認知バイアスとは、誰もが持つ脳のクセです。
間違った行動でも、誘導されてしまいます。

あきらめさせない」という方向に誘導されるのは、以下の認知バイアスです。

  • 現状維持バイアス
    現状を正当化しようとする傾向
  • 処分効果
    株が下がっているのに保有したままにする投資家の傾向
  • サンクコストの誤り
    無駄だと分かっていても、今までの努力を回収しようとする傾向

上記3つの認知バイアスは、似たような性質を持っています。
いずれも「辞める」という選択肢を邪魔します。

人間は、本能的に「後悔」を恐れるからです。

実は、マウスにも「サンクコストの誤り」があります。[※]

人間以外の動物にも後悔があるのです。

マンガやドラマで「あきらめるのは簡単だ」というセリフを聞きます。
しかし実際は、あきらめる方が難しいのです。

間違いを認めたくない心理が働く

あきらめることができない状態」というのは、どういった心理でしょうか?
これは後悔の心理です。

「あきらめる」ということは、「間違いを認める」ということです。
今までの努力や投資が、間違っていたと認めることになります。

それは、後悔の感情です。

後悔の恐れは記憶にある

後悔の感情は、記憶に必要な脳領域が反応します。[※]

  • 海馬と言います。

また、後悔を恐れているときも、同様に記憶の領域を使います。[※]

後悔の恐れは、記憶と繋がっているため、非常に強く作用します。
このことからも、人間の後悔は、制御が困難です。

「あきらめなければ成功する」は正しいか?

「やり続けないと成功しない」というのは事実でしょう。
しかし「やり続ければ成功する」は、事実ではありません。

結局、成功するかどうかは、誰にも分からなのです。

成功するためには、先人が残したアイデアや記録がヒントになります。
私たちは、本を読み、先人に学びます。

人の社会は、上手く行った人の情報を共有して、成長してきました。

それらは本となって残され、未来の社会に役立ちます。
これは人類の特徴でもあります。

世代の記憶を引き継ぐことができる動物がいます。
親の体験は、子どもに道しるべを与えます。

この能力は、人間では見つかっていません。
人間は記録を残し、伝えることができるので、不要だったのでしょう。

さて、冒頭のイラストには、逆のパターンがあります。

あきらめないといけない時

どこまで掘り続けても、宝はありません。
掘る場所が違うのです。

結局は、このイラスト通りになる可能性があります。
努力や投資を続けても、ひたすら消費するだけかもしれません。

  • 善は急げ
  • 残り物には福がある

逆の意味を持つ「ことわざ」があるように、「あきらめなければ成功する」とは限りません。

例えばベトナム戦争のように、「引くに引けない」といった状況は、過去の歴史にもあります。
大きな集団になるほど、あきらめることができなくなります。

こういった例は、身近にも存在します。
恋愛の場合は、「別れると後悔するかもしれない」という感情が強く働きます。
会社であれば、「せっかく今までやってきたのだから」という理由で、無駄な風習が残ったままになっていることもあります。

これらは「やめた方が良いこと」なのに、「現状維持バイアス」や「サンクコストの誤り」などの錯覚によって、間違った方向に誘導されます。

行動を変える方法

「あきらめるか」「やり続けるか」の選択は、状況によって正解が変わります。
それは「運」かもしれません。

認知バイアスは、正しい判断を邪魔します。
このバイアスに勝つには、客観的に判断することです。

しかし、自分を客観的に見るのは、非常に難しいと言えます。
第三者からアドバイスを受けるのは、有効な手段です。

もちろん、他人の意見は、あてにならないことも多いです。
そのため、経験者や専門家に頼るのがベストです。

発言者の意図に注意する

「あきらめない人が成功する」というのは、発言者の意図を読む必要があります。
もし、あなたを誘導する目的があれば、注意してください。
引っかかる可能性があるからです。

例えば、セミナーであれば、「参加者があきらめると不利益になる」という理由で、下図のイラストを使うかもしれません。

あきらめなければ成功する

発言者にどんな目的があるかは、注意をしてください。

成功者の意見は目立つ

SNSによって、成功者のアドバイスを見る機会が増えました。
それは、成功しているからこそ、共有されます。

「諦めないで失敗した人」は、隠れたままです。
したがって、反面の部分にも注目すると、より良い判断ができます。