誰もが「失敗を恐れてはいけない」と言います。
SNSでもよく見かけます。
私たちは、「上手く」失敗できていますでしょうか?
「失敗が怖い環境」があるのも事実です。
上司やコーチから、激しく怒られるなら、失敗を恐れるのが当然です。
また、人の安全を扱う仕事は、失敗なんてできません。
それでは具体的に「失敗を恐れない」とは、どうすれば良いのでしょうか?
目次
「失敗は成功のもと」は本当?
「失敗は成功のもと」という言葉があります。(もしくは「失敗は成功の母」)
誰もがそのように思っていますが、科学的な根拠が得られたのは最近です。
ニーチェという有名な哲学者の言葉があります。
私を殺さないものは、私を強くする。
これは「死なない程度の困難は、人を強くする」という意味です。
現代だと、ちょっとブラック企業のように聞こえるかもしれません。
他人に強要するならブラックですが、自分が人生の目的を達成するためなら、有用な考えです。
科学的な根拠
アメリカ国立衛生研究所の研究者を分析すると、「失敗は成功のもと」は、やはり正しいことが分かりました。[※]
早期キャリアに失敗した研究員は、キャリアに成功した研究員よりも、後の10年間で多くのヒット論文を生み出していました。
早い失敗は、後に成功する条件です。
不思議な現象が起こる
考えて見ると、とても不思議です。
早期キャリアに成功した研究員は、資金援助を受けることができます。
研究を進めるため、資金を受けたのに、資金援助のないグループが成功しているのです。
まるで「有能な人に投資をしよう」という考え方が、否定されているような結果です。
この研究では、成功要因が特定できていないので、さらなる追加の研究が必要です。
雑草のように強く生きる
上記の研究では、援助を受けられた人よりも、援助を受けられなかった人が多く成功しています。
水が与えられ、花を持たせてもらうよりも、雑草のように育った人の方が優れていることを意味します。
また、上記の研究では、失敗した人の離職率が高いのも事実です。
成功するのは、とにかく粘ることが大切です。
失敗する具体的な方法
「失敗を恐れてはいけない」と、誰もが言います。
しかし、このそれっぽい言葉には、具体的な方法がありません。
私たちの人生に、失敗を役立てることは、できるのでしょうか?
失敗を分解してみると、分かります。
エジソンから学ぶこと
エジソンの名言があります。
私は失敗をしたことがない。
単に1万通りの「うまく行かない方法」を見つけただけだ。
これは、分かりやすい名言です。
失敗という言葉を否定しています。
失敗を「上手く行かない方法」に置き換えることで、心理的なダメージをなくすのです。
例えば「何もしない」は、「何もしないをする」と同じです。
「何もしないをする」=「上手く行かない方法」です。
失敗をする方法は見つけにくいですが、上手く行かない方法なら見つけられます!
失敗がモチベーションになる
失敗を知ることが大切です。
なぜなら、失敗がモチベーションになるからです。
心理学の研究を紹介します。[※]
心理学者は、この発見を「ヘミングウェイ効果」と名付けました。
この研究は、まず大学生にエッセイを書く課題を与えます。
半分の学生には、「最初に○○について書いてください」「次に、○○について書いてください」という具体的な指示があります。
しかし、もう半分の学生は、その指示がないままエッセイを書きます。
この違いは、「作業の終わりが明確かどうか?」です。
指示がないと、どこまで書けば良いのか分からないからです。
完成させないメリット
両方の学生は、エッセイが書き終わる前に強制的に終了させられます。
これは、誰も完成できない課題だったのです。
ここからがポイントです。
具体的な指示があったグループは、エッセイを完成させるモチベーションが高いことが分かりました。
つまり、作業の終わりが明確になっていれば、やる気が続くのです。
やりたくない作業であっても、途中で辞めさせられたら「終わるまでやらせて欲しい」という心理になるのです。
しかし、終わりが不明な作業だと、意欲を失います。
失敗を知ることができる
上記の研究は、「失敗は何か?」と「失敗の要因」を知ることができます。
まず、失敗は「エッセイが完成できないこと」です。
そして、失敗の要因は「終わりが見えないこと」です。
この2つを知ることで、挫折を防ぐことができます。
さらに、「失敗をしても良い」と教えることで、目標を達成しやすくなります。
大切なのは、目標を作ると同時に、失敗を見つけることです。
失敗とは何か?
失敗とは、フィードバックです。
ボールを投げて、左にそれたら、次は筋肉を調整して、右に向けて投げるでしょう。
「左にそれた」という視覚の情報が「フィードバック」です。
私たちは、赤ちゃんの頃から、フィードバックを繰り返して成長します。
このフィードバックは、成長をするために必要です。
赤ちゃんが手を伸ばします。
しかし、手が届きません。
物をつかむことに、失敗しているのです。
この失敗を重ねて、体の感覚を学んでいるのです。
私たちが普段、生活できているのは、失敗によって「磨かれた感覚」を持っているからです。
上手く行かない方法を学んでいるのです。
失敗できる環境を作る
失敗は、単なるフィードバックです。
しかし、他人が与えるフィードバックには、思いやりが必要です。
失敗を恐れるとは、他人からの否定的なフィードバックを恐れているだけです。
教える立場の人は、そこに気づく必要があります。
できない人を怒るのは、それ自体が間違いだったのです。
心理的な安全を確保する
学校や職場では、心理的な安全を確保する必要があります。
これができないと、誰も成長できません。
失敗を恐れるからです。
仕事であれば
パソコンを使う仕事であれば、必要なデータを捨ててしまうのは、致命的な失敗です。
ですからバックアップを取るなど、環境を作ることが大切です。
地震や災害を予測して、クラウドにデータを保管するのも良いでしょう。
「失敗を恐れるな」は難しい
ほとんどの人は、失敗を恐れていません。
失敗して怒られたり、自分が悪く見られることを恐れています。
後者は簡単です。
自分が良く見られるように、振る舞わなければ良いのです。
ムリをせず、自然体を受け入れてもらえば、ずっと心がラクになります。
(自然体を受け入れてもらえないのは、他人ではなく、自分です)
自分ができることもある
失敗は、成長に不可欠です。
そして、失敗するには、心理的な安全が条件です。
会社であれば、そのような環境を作るのは、困難に感じるかもしれません。
上司や、会社の風土によって、そのように感じさせるからです。
それでも、自分ができる範囲のことを探すのが一番でしょう。
もちろん、あなたが上司であれば、心理的に安全な環境を作るのは、使命とも言えます。
(そうなると、自分の安全も必要ですから、なかなか難しいのです)
失敗から学ぼう
現在の教育現場では、歴史から失敗を学ぶことが困難です。
織田信長は、どうして失敗したのか?
今川義元は、なぜ(弱小国だった)信長に負けたのか?
失敗に注目することは、人生において重要です。
なのに、年号や名前を覚えるのが現代の教育です。
そうしないと、採点が難しいからでしょう。
今は、インターネットで検索できる時代です。
「名前や年号を覚えるぐらいなら……」と思うのは、私だけでしょうか?