今回のテーマは思い込みです。
「地球が丸いのは嘘ですか?」
地球が平坦であると信じている組織があります。
フラット・アース協会です。
地球が丸いことを「証明」するのは、難しいかもしれません。
しかし、海を見れば「水平線の丸み」から、地球が丸いことが分かります。
また、遠くに見える大きな船は、船体の上部しか見えません。
それは地球が丸いからです。
このように、地球が丸いという証拠は、豊富です。
そうにも関わらず、地球が平坦だと信じてしまうのは、なぜでしょうか?
人間の思い込みは、非常に強く働きます。
先入観や思い込みが、どれほど強いのかを研究した報告があります。
人は事実を知っていても、自分が信じたいものを信じるのです。
思い込みによって、どのように認知が歪むのかを説明します。
目次
自分が信じるものを信じる研究報告
人間は、どれほど強い先入観や、思い込みを持つのでしょうか?
そんな疑問を検証すべく、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者らは、心理学の実験を行いました。 [※]
- 論文:Confirmation bias in human reinforcement learning: Evidence from counterfactual feedback processing
![経験vs真実 人は経験を信じる](https://tabilens.jp/wp-content/uploads/2019/07/experience_vs_true.png)
実験の参加者は、2つのシンボル(記号)のどちらかを選択し、お金を受け取ることができます。
何回も繰り返すことで、シンボルの価値を学ぶことができるのです。
例えば、「左右対称のシンボルは、価値が高い傾向にある」などを学習します。
2回目の実験では、 2つのシンボルの価値が最初から分かっています。
つまり、先ほど学んだ学習が無駄になるわけす。
この実験は、「自ら学んだ経験」と「教えてもらった真実」との戦いです。
参加者は1回目の実験で「自ら学んだ経験」を優先させました。
価値が低いにも関わらず、自分が「価値のあるシンボルだと信じる方」を選んだのです。
もちろん、少ない金額を受け取ることになります。
この実験の意味
この実験は、人間の思い込みがどれほど強いかを表現しています。
なぜなら「お金を損しても、自分の信じたものを信じる」からです。
損をすると分かっていても、間違った選択をしてしまいます。
なぜ間違った情報を信じるか?
先ほどの実験のように、人間は「自ら進んで学んだこと」を絶対のものにします。
これは当然です。
他人から言われたことを全て信じていれば、他人に人生が操作されます。
また、自ら学ぶことは、重要なものとして記憶に残りやい性質もあります。
都合の悪い情報は無視する
嫌いな人の情報を集めると、やはり「嫌うための材料」を自然と揃えてしまいます。
自分に都合の悪い情報は、避けるのが人間の心理です。
嫌いな人でも、良い情報があれば、それは一つの判断材料として使うべきです。
しかし、それが本能的にできないのですから、人間はやっかいです。
他人が知らないものを見つける喜びがある
冒頭の「地球は丸くない」という話は、誰もが「地球が丸いことを知っている」からこそ、その情報に人が引きつけられます。
それは興味深く、刺激的です。
以下のようなニセの情報は有名です。
- 9.11のテロにアメリカ政府が関与した
- 人類は月に行っていない
- 地震兵器で大地震が起きる
- 地球温暖化はねつ造である
- 進化論は間違っている
タイタニック号の沈没は、どうでしょうか?
タイタニック号は、すり替えられ、陰謀によって沈んだ?
氷山ではなく、火災で沈んだ?
これは古すぎて、証拠が少なく、現代でも分かっていません。
しかし、それらしい情報が見つかるだけで、世の中はエキサイティングします。
最近でも、火災説などが話題になりました。
常識を疑うのも大切
そうは言っても、疑うことから始めなければ、科学も進歩しません。
常識を疑わなければ、何も見つからないでしょう。
これも多様性のひとつです。
ほんの一部の人が、常識を疑い、熱心に取り組むことで、新しい発見が起きます。
こうして社会は、より良いものになります。
ニセの情報を信じ込ませる人
疑うことは、何も悪くありません。
問題なのは、自分の利益のために人を信じさせることです。
例えば、災害の後です。
「災害の後、あなたは勧誘されましたか?」
ニセの情報を信じてしまうのには、不安感も影響します。[※]
大きな災害のあと、陰謀論がSNSにあふれます。
ニセの情報を信じている人たちが、エキサイティングして拡散します。
さらに陰謀論を信じる人は、陰謀論を否定する情報を無視します。[※]
前述の研究が示すように、真実を伝えられても、自分が信じたい情報を信じてしまうのです。
結局のところ、ニセの情報は、人の大切な時間を奪うだけです。
思い込みを防ぐ方法
思い込みや先入観のバイアスは、誰もが持っているものです。
おそらく人間社会には、必要なのでしょう。
毎回疑っていたら、何も進みません。
多様性との絶妙なバランスで、人類は進化しています。
思い込みや先入観があることを認識する
思い込みや先入観を防ぐには、この方法が一番です。
「人間は、思い込みや先入観を避けるのが難しい」という事実を知ることです。
ですから、真実にたどり着くには、努力が必要です。
また、統計データについて学ぶのも良いでしょう。
私たちは、平均値が多数だと勘違いしがちです。
グラフやデータは、2つ並べることで真実が見えることもあります。
信用や信頼に関する心理のメカニズムは、以下の記事に詳しく書いています。
![](https://tabilens.jp/wp-content/uploads/2019/04/lie-160x90.png)
最後に、心理学の研究は、私たちが「より良く行動できるため」に存在します。
それを知れば、未来には、もっとうまくやれます!
![](https://tabilens.jp/wp-content/plugins/tkama_gtag-finish-read/images/tkama_gtm-spacer.gif)