利他的とは、見返りを期待せずに、相手を助けることです。
動物にも、利他的行動は見られます。
人間には人間の社会があり、動物には動物の社会があるのです。
利他的な行動は、社会のコミュニティを発展させるのに必要なのでしょう。
生存戦略の一つでもあります。
しかし「利他的な行動が嫌われる」というメディア記事を見たことがあります。
これは極端な話で、タイトルのインパクトで注目を引こうとしています。
タイトルはともかく、内容も「利他的な行動が嫌われる」という結論になっています。
動物でも利他的な行動を嫌えば、今の時代まで生存できているか、怪しいところです。
私たちは、利他的な行動をすれば嫌われるのでしょうか?
いいえ、利他的な行動は、あなたを魅力的に見せることになります。
目次
利他主義の人は魅力的です
古くから「良い行いは、回り回って自分に還元される」と言いますが、脳科学では「他人を助けるときに、自分も気持ちの良い感情になる」ということが分かっています。
ボランティアをしているとき、他人を助けている時は、快楽の神経物質が生成されます。
つまり、すぐ自分に還元されるのです。
利他的な行動をするように、脳が設計されていると分かります。
それでは利他主義の人は、他人からどのように見られるのでしょうか?
利他的な男性は魅力的に見える
家族に対し、見返りのない行動をするのは、自然なことで納得できます。
しかし、他人に見返りを期待せず行動するのは、なぜでしょうか?
もしかしたら、利他的な人は、恋人に選ばれやすいのか?
そんな疑問に答えを出そうとしたのは、ノッティンガム大学(イギリス)の研究者らです。[※]
もし、そのような傾向があるなら、進化の中で利他的でない人が淘汰されるかもしれないのです。
その仮説はあっているかもしれません。
驚くことに、将来のパートナーとして、利他的な人は魅力が高いことが分かりました。
ボランティア活動も含まれます。
女性も魅力的に見える
前述のように、利他的な男性はモテる傾向があります。
それでは、女性はどうでしょうか?
先ほどの研究の中で、男性だけでなく、女性も利他的な人が好まれることが判明しています。
結局のところ、人間は「子どもを産んでからのこと」を考える必要があります。
他の動物よりも、人間の赤ちゃんは、手間が掛かるのです。
ここに進化的な理由があります。
自己中心的なパートナーでは、家族を守ることができません。
意識していなくても、遺伝子のレベルでパートナーを選んでいるのでしょう。
「利他的な人が嫌われる」とは何か
ここまで、利他的な行動は、男女ともに魅力が高いことを説明しました。
冒頭にあった「利他的な人が嫌われる」というメディアの記事は、何でしょうか?
心理学の研究は、利他的な行動のマイナス面を明らかにしています。
ワシントン州立大学の研究者らは、「利他的な人がチームから追放される」という衝撃的な研究を報告しました。[※]
これは極端な例で、注意が必要です。
意図がなく他人に奉仕する
この実験では、ビデオゲームが使われています。
ゲームでは、チーム4人のうち、人間は1人だけです。
しかし、実験の参加者らは、他のチームメイトがコンピューターだと知りません。
つまりコンピューターが、利他的な行動をするように、プログラミングされているのです。
その利他的な行動は、あまりにも論理的ではありません。
なぜなら、ひたすらCPUプレイヤーが損をするからです。
そんな利他的な行動をするメンバーを、実験に参加した本物の人間は、チームから排除することを選びました。
これには2つの理由が考えられます。
- 利他的な行動の目的が不明で、不気味に見える
- 自分たちのハードルが上がってしまう(同調圧力を感じる)
全く何も得ることがない「利他的な行動」は、人間にとっては不気味なのです。
この実験は、ビデオゲームです。
現実世界で他人を助けるのとは、違います。
もちろん、人助けを不気味に思う人は、いないでしょう。
チームから排除する理由のひとつは、論理的でない不気味な行動です。
そして、もうひとつの理由は、同調圧力を感じることです。
「自分たちも、過剰な利他行動をしないといけなくなる」というのが本音です。
聖人のような行動を見て、恥を感じるのでしょう。
また、何かしらのルール違反をしているように見えたようです。
あまりにも不可解な行動をする人は、チームに受け入れにくいと判断されました。
つまり、常識的な行動の範囲内で、ボランティアをする必要があります。
ひとりぼっちにならない方法は?
「利他的な人がコミュニティから孤立する」という研究報告は、他にもあります。[※]
この研究報告では、ひとりぼっちになりやすい人の仮説があります。
それは、自分の好みより、より多くの他人に合わせようとする人です。
研究者らの仮説が正しければ、とても皮肉な話です。
しかし、ひとりぼっちにならない方法とも言えます。
無理をして、他人に合わせようとせず、「好き」をハッキリさせた方が孤立しないのです。
複雑なボランティア精神
この2つの実験結果が示すことは、利他的な行動が非常に複雑だということです。
度が過ぎては、不自然に見えます。
何か裏があるのではないかと、思われるからです。
また、おせっかいな人が嫌われるのに、似ています。
一方で「誰かを助ける」ということは、社会的な人間に必要なことです。
誰かを助けたり、手伝ったりすることは、異性にとっても魅力的な行動です。
結局のところ、バランスが大切です。
いくらモテるからといって、過剰な奉仕は疑われます。
自分の利益しか考えない人は、親族であっても、後で揉めてしまいます。
ですから人間が「利他的なパートナーを好む」という研究報告は、非常に納得できます。
家族のために尽くしてくれる人かどうかを、結婚する前に相手は見ているのです!
寄付についての心理学はこちら。
「人間は、考えれば考えるほど、自己の利益を優先する」という話も。