私たちは、子供のころから「自分の意見を持ちなさい」と言われてきました。
相手に流されることで、人生の大切な「時間」や「お金」を、搾取(さくしゅ)されることが心配なのでしょう。
これは正しいと言えます。
一方で、「自分の意見を持つべき」という「〜すべき」の思考は、理想に囚われがちになり、ストレスにもなります。
目次
「自分の意見がない人」の意外なメリット
「自分の意見を持たなければいけない」
これは、絶対的に正しいでしょうか?
悩みが多かったり、人生に行き詰まっている人は、「〜すべき」という思考に固執しがちです。
そもそも、みんな自分の意見を持って生きているのでしょうか?
人は、自分の意見だと信じ込んでいる
心理学の研究です。
「隣人の驚くべきアドバイス」という研究報告があります。[※]
この研究は、「私たちが自分の意見を持ってないかもしれない」ということを示唆しています。
実験の参加者は、男女でデートを行います。
デートは1回ごとに、パートナーが変わります。女性はデートの後、男性に対して評価をします。
ここからが実験のポイントです。
女性側は、次のパートナーに会う前に、前の女性が評価した内容を見ることができます。
つまり、前の評価を参考にできるのです。
上記の実験内容で分かるのは、他人の評価がどのように影響するかです。
実験の参加者らは、前の評価をコピーしていました。
他人の評価と(驚くほど)類似していたのです。
しかし、聞き取り調査をすると、全くその意識がありませんでした。
つまり、自分の評価だと思い込んでいたのです。
そうにも関わらず、聞き取り調査では、「他人の評価より、自分の評価が正しかった」と言うのです。
好きな人の友達は大切な隣人
少し話が脱線しますが、上記の研究報告を見ると、恋愛について気になることが出てきます。
それは「好きな人の友だちも、大切にしなければいけない」ということです。
友だちの友だちは、敵であってはいけません。
なぜなら、友だちの評価は、本人の評価に返って来るからです。
自分の意見は周りで作られる
前述の研究は心理学ですが、脳科学でも同じような事例があります。
人間の脳は、勝手に情報を補っていくものです。
しかし、当の本人は、自分の意志だと勘違いしています。
このような研究報告を見るたびに、「自分の意見なんてないかもしれない」と思います。
そうであれば、無理に自分の意見を持つことは、ラクな生き方ではありません。
いっそのこと、他人の意見に流されて、ストレスを受けない生活を送る方が良いでしょう。
自分の意見を無理に持たないメリット
心理学の研究によると、他人の真似をする人には、ある特徴がありました。[※1]
それが、外向性(社交性)です。
コミュニケーション能力が高い人ほど、他人の真似をするのです。
昔から知られているとおり、真似をすると、相手の印象が良くなります。[※2]
社交的な人は、他人から好かれるために、真似をするのが得意だったのです。
ある意味「自分を持っていない」とも言えます。
そう考えると、無理に自分を持たなくても、上手くやっていけるのかもしれません。
流れに乗る生き方
「〜すべき」という思考は、余裕がない状況を生みます。
そして、このような思考癖があると、狭い道を歩いてしまいます。
人生には、余裕が必要です。
むりやり流れに歯向かっても、披露するだけでなく、それが正解かどうか、ずっと悩むことになります。
そうであれば、大半のことは流された方が良いのです。
良い流れに乗るコツ
良い流れに乗るには、どうすれば良いでしょうか?
誰もが言うように、行動が一番です。
「失敗を恐れずに行動する」というアドバイスは、役に立ちません。
行動しない理由は、何となく動かないからです。
これを防ぐには、決断のスピードを速めることです。
すべての決定を1秒以内にしてください。
これを心がけるだけで、はるかに行動できる人間に生まれ変わります。
実際に1秒は不可能かもしれません。
コインを投げて、オモテかウラかで決めるのと同じように、意思決定から逃げないようにするためです。
意思決定を先延ばしするほど、行動ができなくなるからです。
批判的な思考をなくすことができる
「自分の意見がない人」は、「批判的な思考をなくすことができる」というメリットがあります。
他人の思考を受け入れることで、他人に対する批判的な思考をやめることができるからです。
他人の意見を認めない思考だと、どうしても相手を下に見てしまいます。
これでは、悪い心理スパイラルに陥ってしまいます。
自分の意見がない人は、必要以上に相手の領域を踏まない人です。
少し無関心がちになりますが、赤の他人にまで、なりふり構わず自分の意見を主張する必要はありません。(その生き方はずっと辛いです)
無理に意見を求めない
他人にムリヤリ意見を求めるのも、よくある間違いです。
例えば会議の場で、新入社員に無理な意見を求める人がいます。
結局、意見も採用されず、「意見を言う=失敗」として、学習してしまいます。
とはいえ、経験のない新入社員の意見は、バイアスがないので貴重な意見になる可能性もあります。
会議のような場ではなく、気軽に聞けば良いのです。
たったそれだけのことです。
もちろんデメリットもあり
もちろん「自分の意見がない人」には、デメリットもあります。
多少ワガママであっても、多少性格がひねくれていても、正直で素直である限り、その人には魅力があります。
嫌われることを避けすぎると、逆に人は寄ってきません。
コミュニティは、似たもの同士で輪を作ります。
誰からも嫌われないように振る舞うと、かえってコミュニティが成立しません。
オープンではなく、鍵が掛かっているものこそがコミュニティの本質です。
これは、前述の「真似をすると、相手の印象が良くなる」という研究報告とあわせて、バランスを取ってください。
コミュニティを作りやすい現代社会
現代社会は、インターネットの発展により、コミュニティを作りやすい時代です。
学校のクラスだと30人程度ですが、その人数では、変わった意見を持つ人が複数集まることは不可能です。
会社や近所付き合いだと、さらに人数は少なくなります。
昔は、東京などの大都市に限り、「とがった意見を持つ者同士が集まりやすい」という地の利がありました。
しかし、現代社会にはインターネットがあります。
これにより、コミュニティの作りやすい環境に変わりました。
ですから、SNSを活用するのも良いでしょう。
今は昔よりも、自分の意見を大切にすることができる環境です。
こうして多様性が進み、社会はよくなる可能性があります。
いずれにしても、自分の意見を持つことは、その人の魅力です。
しかし、そこに固執しないでください。
すべてに自分の意見を持つ必要はなく、流れに身を任せるのも良いでしょう!