サークルや教室になじめない人の改善方法を解説します。
頭の中では、どのようなことが起こっているのでしょうか?
あなたは、テニス教室に体験入学しています。
初めてテニスラケットを握るので、非常に不安な気分になります。
周囲の人たちは、テニスの初心者です。
初めてテニスラケットを握る人も多いはずです。
ゆっくりとしたボールを打ち返す練習が始まります。
あなたはのラケットは、全くボールに当たりません。
先生は笑っています。
後ろの人たちも、笑っているように思えます。
テニスの体験よりも、恥ずかしい体験だけが記憶に残ってしまいました。
もう二度と体験入学をしたいと思いません。
このストーリーは、実際によく起こります。
他人の目線が気になって、その場から逃げたくなります。
しかし実際は、誰もあなたを見ていませんでした。
目次
2つのバイアスが思い込みを生む
冒頭のようなストーリーは、子どもの頃の経験に引っ張られます。
体育の時間で恥をかいてしまい、その後は体育そのものが嫌いになります。
しかし、テニス教室のストーリーは、周囲も初心者です。
重要なのは、他人が恥をかいても、あなたは気にしないということです。
しかし、自分が恥をかいたときだけ、周囲が笑っているような感覚になります。
これには、認知バイアスという心理効果が影響します。
認知バイアスは、誰もが持っている脳のクセです。
この場合では「笑われている」という錯覚です。
実際は「笑われていない」にも関わらず、あなたの認知の世界では、「笑われている」に変換されるのです。
過去にそのような経験があるため、客観的な判断ができないからです。
確証バイアス
ひとつ目は、確証バイアスです。
この確証バイアスというのは、非常に強力な作用があります。[※]
有名なのは、血液型診断です。
これは、偏見と差別を生む可能性もあって、科学ではしっかりと否定されています。
「血液型が意思決定を変える」という科学的な根拠はありません。
それにも関わらず根強いのは、確証バイアスがあるからです。
他人の性格は、簡単な方法で判断することができません。
いくつか当てはまっているだけで、確証を得るのです。
一番不幸なのは、悪い診断を信じて「自分はそういうもの」と、思い込んでしまうことです。
嫌なことは受け入れない
確証バイアスが強い理由は「自分の気に入らないことを受け入れない」という人間の性質にあります。
有名な脳科学の実験があります。[※]
これは、事実を知ったときに、人間の脳がどのように変化するかを調べた研究です。
それが気に入らない事実だった場合、脳は「脅威と不安」に関する脳領域が強く反応しました。
信念に反する情報は、人に不安と脅威を与えます。
こうして人は、都合の良い情報を真実として、受け入れていくのです。
少数の法則
もうひとつの認知バイアスは、「少数の法則」です。
コインのオモテ・ウラを当てるゲームをすると、最初はどちらかに片寄ります。
しかし、数百回投げることで、オモテ・ウラが50:50に近づきます。
初期の頃は、数少ない回数しかコインを投げていません。
この段階で、脳は法則があると判断します。
つまり、コインのオモテがよく出ているなら「オモテにツキがある」という判断をします。
実際は、2分の1の確率です。
このように、少数の経験だけで、それを法則化するのが人間の脳です。[※]
あなたは笑われていない
冒頭のテニス教室のストーリーに戻ります。
こういったネガティブな体験をしてしまうと、やはり経験に思考が引っ張られます。
脳が少数の経験を、法則化するからです。
自分が他人を気にしないように、他人は自分を気にしません。
もし、本当に笑われたとしても、それは滅多にないことです。
明らかに相手側に問題があります。
裁判で、加害者が被害者に、暴言を吐くようなものです。
社会的に、あなたは安全な立場にいます。
改善方法「未来の記憶を変える」
認知バイアスを知ることで、いくらか「恥ずかしい」という感情に抵抗することができます。
しかし、それだけで克服するのは難しいでしょう。
そこで、科学的な良い方法があります。
それは、未来の記憶を変えることです。
ポジティブな未来を予測すると過去が変わる
「未来の記憶を変える」というのは、矛盾しているように思えます。
しかし、心理学の研究は、それが実際にあることを示しています。
この研究報告の名前は、「ポジティブな見通しは、バラ色の過去を作る」です。[※]
- 論文:An Optimistic Outlook Creates a Rosy Past: The Impact of Episodic Simulation on Subsequent Memory
何かをする前に、ポジティブで良い結果をひたすら想像します。
そうすることで、その体験が終わったあとの記憶が変化したのです。
ポジティブで良い結果を想像したグループは、体験後の記憶も、ポジティブな記憶に変化しました。
これを利用しない手はありません。
ポジティブな見通しは、未来の記憶を変えることができるのです。
したがって、何かをする前には、肯定的な見通しを想像した方が得です。
冒頭のテニス教室の例では、「恥ずかしい経験」をしました。
しかし、テニス教室の前に、ひたすらポジティブなことを想像していれば、その経験自体を変えることができます。
そして、これも認知バイアスのひとつです。
簡単な心理的トリックですが、より良く人生を楽しむ方法として、お役立てください。