赤いリンゴについて、考えないでください。
そう言われたとき、頭の中から「赤いリンゴ」を取り除くことは、きわめて困難です。
それができなくても、安心してください。
人間の脳は、そのようにできています。
このように、頭の中から取り除くことを「思考抑制」といいます。
しかし、この「思考抑制」は、逆効果です。[※]
取り除こうと思うほど、頭の中に滞在するからです。
なぜ、思考を辞めるのが難しいのでしょうか?
心理学の研究によって、説明することができます。
目次
研究で明らかになった思考抑制の話
オーストラリアの研究者らは、思考抑制に関する実験を行いました。[※]
人間がどのような思考をするのか、調べるためです。
実験の参加者らは、「赤いりんご」「赤い唐辛子」「赤いトマト」を想像しないように求められました。
上手く思考から取り除くことができれば、ボタンを押します。
次の実験では、片目に赤色、もう片方の目に、緑色を見せました。
このとき、「どちらの色の印象が強かったか?」を聞きます。
多くの参加者らは、最初に見た「赤いもの」を思考から外したとき、赤の印象が強いと答えました。
逆に「緑色のブロッコリー」や「緑色のキュウリ」を想像しないように求めると、緑の印象が強くなります。
つまり、頭から取り除こうとすると、その思考が残ってしまうのです。
これでは、逆効果でしょう。
考えないよう努力するのは、意味がないかもしれません。
また、それが上手くできたと思っても、実際は、頭に強く残っているのです。
自覚がなくても情報は頭に残る
この研究で分かったのは、「自覚がなくても思考が残っている」ということです。
実験結果から考えると、おそらく視覚情報として残っているのでしょう。
これ以前の研究報告でも、思考を止めるのは、非常に難しいと判明しています。
思考を止める方法
実験のあと、研究者らは、様々な追加の実験を行いました。
そして、思考を止める有効な方法が見つかります。
実験の参加者らに、「赤いリンゴ」ではなく、「黄色のひまわり」について考えるように求めたときです。
参加者らは、別のものを考えると、「赤」や「リンゴ」といった思考を、辞めることができました。
何かに置き換えることで、赤いリンゴを考えないことに成功したのです。
思考は制御できる
前述の置き換え戦略は、思考を制御する大きなヒントです。
もし、あなたが甘いお菓子や、楽しいゲームについて考えてしまうのなら、別のものに置き換えると良いでしょう。
別のことに集中している間は、不要な思考を辞めることができます。
これを続けることで、思考制御の能力が鍛えられます。
仕事や幸福において、思考を制御することは、とても重要な能力です。
悪い習慣を思考から排除し、良い習慣に置き換えることができれば、自分の成長にもなります。
悪い習慣を辞める方法は、以下の記事もご参考ください。
普段の生活において、思考の置き換えができる場面は、たくさんあります。
この研究は、より良い生活をするためのライフハックとして使えることでしょう。