今回のテーマは思い込みです。
「地球が丸いのは嘘ですか?」
地球が平坦であると信じている組織があります。
フラット・アース協会です。
地球が丸いことを「証明」するのは、難しいかもしれません。
しかし、海を見れば「水平線の丸み」から、地球が丸いことが分かります。
また、遠くに見える大きな船は、船体の上部しか見えません。
それは地球が丸いからです。
このように、地球が丸いという証拠は、豊富です。
そうにも関わらず、地球が平坦だと信じてしまうのは、なぜでしょうか?
人間の思い込みは、非常に強く働きます。
先入観や思い込みが、どれほど強いのかを研究した報告があります。
人は事実を知っていても、自分が信じたいものを信じるのです。
思い込みによって、どのように認知が歪むのかを説明します。
目次
自分が信じるものを信じる研究報告
人間は、どれほど強い先入観や、思い込みを持つのでしょうか?
そんな疑問を検証すべく、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者らは、心理学の実験を行いました。 [※]
- 論文:Confirmation bias in human reinforcement learning: Evidence from counterfactual feedback processing
実験の参加者は、2つのシンボル(記号)のどちらかを選択し、お金を受け取ることができます。
何回も繰り返すことで、シンボルの価値を学ぶことができるのです。
例えば、「左右対称のシンボルは、価値が高い傾向にある」などを学習します。
2回目の実験では、 2つのシンボルの価値が最初から分かっています。
つまり、先ほど学んだ学習が無駄になるわけす。
この実験は、「自ら学んだ経験」と「教えてもらった真実」との戦いです。
参加者は1回目の実験で「自ら学んだ経験」を優先させました。
価値が低いにも関わらず、自分が「価値のあるシンボルだと信じる方」を選んだのです。
もちろん、少ない金額を受け取ることになります。
この実験の意味
この実験は、人間の思い込みがどれほど強いかを表現しています。
なぜなら「お金を損しても、自分の信じたものを信じる」からです。
損をすると分かっていても、間違った選択をしてしまいます。
なぜ間違った情報を信じるか?
先ほどの実験のように、人間は「自ら進んで学んだこと」を絶対のものにします。
これは当然です。
他人から言われたことを全て信じていれば、他人に人生が操作されます。
また、自ら学ぶことは、重要なものとして記憶に残りやい性質もあります。
都合の悪い情報は無視する
嫌いな人の情報を集めると、やはり「嫌うための材料」を自然と揃えてしまいます。
自分に都合の悪い情報は、避けるのが人間の心理です。
嫌いな人でも、良い情報があれば、それは一つの判断材料として使うべきです。
しかし、それが本能的にできないのですから、人間はやっかいです。
他人が知らないものを見つける喜びがある
冒頭の「地球は丸くない」という話は、誰もが「地球が丸いことを知っている」からこそ、その情報に人が引きつけられます。
それは興味深く、刺激的です。
以下のようなニセの情報は有名です。
- 9.11のテロにアメリカ政府が関与した
- 人類は月に行っていない
- 地震兵器で大地震が起きる
- 地球温暖化はねつ造である
- 進化論は間違っている
タイタニック号の沈没は、どうでしょうか?
タイタニック号は、すり替えられ、陰謀によって沈んだ?
氷山ではなく、火災で沈んだ?
これは古すぎて、証拠が少なく、現代でも分かっていません。
しかし、それらしい情報が見つかるだけで、世の中はエキサイティングします。
最近でも、火災説などが話題になりました。
常識を疑うのも大切
そうは言っても、疑うことから始めなければ、科学も進歩しません。
常識を疑わなければ、何も見つからないでしょう。
これも多様性のひとつです。
ほんの一部の人が、常識を疑い、熱心に取り組むことで、新しい発見が起きます。
こうして社会は、より良いものになります。
ニセの情報を信じ込ませる人
疑うことは、何も悪くありません。
問題なのは、自分の利益のために人を信じさせることです。
例えば、災害の後です。
「災害の後、あなたは勧誘されましたか?」
ニセの情報を信じてしまうのには、不安感も影響します。[※]
大きな災害のあと、陰謀論がSNSにあふれます。
ニセの情報を信じている人たちが、エキサイティングして拡散します。
さらに陰謀論を信じる人は、陰謀論を否定する情報を無視します。[※]
前述の研究が示すように、真実を伝えられても、自分が信じたい情報を信じてしまうのです。
結局のところ、ニセの情報は、人の大切な時間を奪うだけです。
思い込みを防ぐ方法
思い込みや先入観のバイアスは、誰もが持っているものです。
おそらく人間社会には、必要なのでしょう。
毎回疑っていたら、何も進みません。
多様性との絶妙なバランスで、人類は進化しています。
思い込みや先入観があることを認識する
思い込みや先入観を防ぐには、この方法が一番です。
「人間は、思い込みや先入観を避けるのが難しい」という事実を知ることです。
ですから、真実にたどり着くには、努力が必要です。
また、統計データについて学ぶのも良いでしょう。
私たちは、平均値が多数だと勘違いしがちです。
グラフやデータは、2つ並べることで真実が見えることもあります。
信用や信頼に関する心理のメカニズムは、以下の記事に詳しく書いています。
最後に、心理学の研究は、私たちが「より良く行動できるため」に存在します。
それを知れば、未来には、もっとうまくやれます!