運動会で順位を付けないのは、なぜダメなのか?【心理学から】

運動会で全員1位になるのは間違いですか?

運動会で「全員が1位」「順位がない」といった教育があります。
順位とは「あなたは勝者、あなたは敗者」という記号でもあります。

子どもは、敗者になることで、ショックを受けるかもしれません。
たしかに順位がなければ、それは起きません。

一方で、勝者側の子どもが複雑です。
勝ったのに、同じように見られるのは、なぜ?」という感情になります。

子どもだから、そこまで考えないだろう」と、大人が思っているなら間違っています。
子どもは、優劣に敏感だからです。[※参考文献1]

したがって、「順位で優劣を付けない」とうことは、意味がありません。
比較を廃止したのに、当の子どもたちは、比較をやめていません。

自分が優れていることにこだわる

全員が1位になると、実質的に負けた子どもたちは、どのような感情になるのでしょうか?
やはり「(何もしてないけど)もらえて当然」という自己中心的な感情になります。

これは「過剰な賞嘆」という状態です。
何もしていないのに、褒めすぎると、自分が大好きになってしまうのです。[※参考文献2]

自分が大好きとは、以下のような性格です。

  • 自慢するのが好き
  • 好都合なことは自分のおかげ
  • 不都合なことは他人のせい
  • 他人への感情移入が苦手

これは「褒めて育てる」のネガティブな側面です。
もちろん、スパルタ教育は、これよりも悪いです。

単純に「やってもいないのに、褒めるのが良くない」というだけです。
それは、「過剰な賞嘆」です。

不当な報酬

報酬(ごほうび)は、正当でなければいけません。

1位になる」というのは、称号です。
ですから「誰もが1位になる」というのは、不当な報酬です。

自分は、賞賛を得て当然だ」という間違った思考が生まれるのです。

報酬は役に立つか?

不当な報酬は、ネガティブな思考を生みます。

だからと言って、正当な報酬が良いとは限りません。
報酬がモチベーションになるかどうかです。

報酬は、外的モチベーションと呼ばれています。
報酬という外部の要因によって、やる気が出るからです。

一方で「単に好きだから」という感情は、内的モチベーションと言います。
感情という内部の要因によって、やる気が出るからです。

外的モチベーションの罠

私たちは、あまり気が乗らない仕事もします。
それは、給料がもらえるからです。

給料があれば、やりたくない仕事ができてしまいます。
やりたくない仕事」というのは、非常に効率が悪いです。
料理の苦手な人が、手際よくできるわけがありません。

とても効率が悪いので、外部の報酬に頼るしかないのです。

内的モチベーションが上手くいく

単に好き」という内的モチベーションの人は、出世や成功に恵まれています。
お金のためにイヤイヤ働いている人と違って、効率が違うからです。

そう考えると、メダルや順位がモチベーションになるとは限りません。

他人との比較も上手くいかない

運動会で順位を付けないのは、意味がありません。
子どもは、優劣に敏感だからです。

もちろん順位を付けても、比較をしてしまいます。
それでは、他人と比較ばかりすると、どうなるのでしょうか?

それは、常に他人と比較するようになってしまうのです。[※参考文献3]
そして、自分が優れていることに、こだわります。

どうすれば良いか?

順位を付けても、付けなくても、どちらも悪く思えるかもしれません。
実は、上手くいく方法がいくらかあります。

自分の過去と比較する

最も良い方法は、過去と比較することです。
他人と比較するのではなく、自分の過去と比較するのです。

以下の記事に詳しい方法を書きました。

失敗を信じる

心理学の研究によると、失敗に対する考え方が重要です。[※参考文献4]
親が「失敗は悪いことだ」という考え方だと、子どもにも、同じ思考ができます。

一方で「失敗を経験するから、学習できる」という考え方は、子どもにも伝染します。
失敗は、学習です。

以下の記事では、上手く失敗から学ぶ方法を解説しています。

努力を褒める

心理学の研究によると、結果を褒めるより、努力を褒めた方が、モチベーションが続きます。[※参考文献5]
根拠もなく「頭が良いなあ」と褒めることで、承認欲求が強くなります。

一方で、努力を褒めると、改善への意欲が強くなります。
改善することが楽しく感じるので、モチベーションが続くのです。

海外の場合

アメリカでは、参加トロフィーを子どもに与える文化があります。
参加すれば、能力があってもなくても、同じトロフィーがもらえます。

参加トロフィーは、心理学でも評価が分かれています。
しかし、トロフィーに満足することは、スポーツ自体の楽しみを減らします。

ひとつ分かっているのは、トロフィーに巨大な市場があることです。
主催側は、トロフィーに多くのお金を払っています。

結論

負けることは良い」ということを伝えてください。

金メダリストは、次のオリンピックで、金メダルを獲るのが難しくなります。
銅や銀のメダリストは、次のオリンピックで金メダルを獲る確率が増えます。

負ける」「失敗」という言葉を「学習」「成長」という言葉に、置き換えてください!

参考文献

  1. Early reasoning about competence is not irrationally optimistic, nor does it stem from inadequate cognitive representations.
  2. When Parents’ Praise Inflates, Children’s Self-Esteem Deflates.
  3. The Psychology of Competition: A Social Comparison Perspective.
  4. Parents’ Views of Failure Predict Children’s Fixed and Growth Intelligence Mind-Sets
  5. Praise for intelligence can undermine children’s motivation and performance.