あなたが大好きな音楽に出会った時のことを思い出してください。
サビの部分が、頭の中で何度もリピートします。
何回でも聴きたいと、感じるでしょう。
好きでたまらない感情に包まれます。
しかし、100回聴いた後は、どうでしょうか?
素晴らしい音楽に出会った頃の興奮は、すでにありません。
どんなに好きな体験であっても、人間の脳は、マンネリになるようできています。
なぜ、私たちには、マンネリというシステムがあるのでしょうか?
また、どうすれば良いのでしょうか?
今回は、マンネリについて分かりやすく解説します。
目次
マンネリがある理由
マンネリとは、刺激に対する「慣れ」です。
引っ越しをしたり、学校に入学したとき、最低でも1週間は、刺激であふれます。
新しいものを、脳が認識しているのです。
1度でも視覚に入れば、脳に保管されます。
次からは、記憶を取り出すことができます。
この記憶を取り出すのが、想像という行為です。
そして想像ができれば、刺激がなくなるのです。
予測ができれば、刺激になりません。
これは、理にかなっています。
新しい環境に、慣れるためです。
いつまでも、ときめいていたら、キリがありません。
新しい環境に、誰もが不安を持ちます。
そのまま不安が続けば、新しい環境に適応できません。
「慣れ」は、不安を消す機能でもあります。
このように「慣れ」は、変化や環境に対応するためにあります。
大人になると時間が早く感じる理由
子どもの頃は、はじめて見たり、聞いたりすることであふれます。
インプットされる情報量が多いのです。
大人になれば、このインプット量が少なくなります。
脳が補完するからです。
子どもの頃は、視覚情報のインプット量が多いので、脳の処理も多くなります。
情報を処理する量が多いと、時間が遅く感じるのです。
緊急時に処理が増える「走馬灯」と、同じ理論ですね。
年齢を重ねると、視覚処理が遅くなります。
これが時間を早く感じさせる要因です。
マンネリを利用する方法
マンネリには、良いマンネリがあります。
それは、面倒なことをマンネリ化させる方法です。
といっても私たちは、自然にそれを行っています。
最も身近な例では、「歯磨き」「お風呂」「掃除」などです。
「習慣化」とは、マンネリ現象なのです。
面倒でもずっと続けることで、マンネリ化して、面倒ではなくなります。
むしろ「しないと気持ちが悪い」という不快感すら出てきます。
これは人生において、非常に重要なことです。
練習やトレーニングをマンネリ化させて、感覚を鈍らせることができます。
マンネリは、成功要因だったのです。
まさに「継続は力なり」です。
マンネリを防ぐ方法
前述の通り、マンネリは悪いことではありません。
とはいえ「素敵な体験を新鮮な気持ちで、もう一度したい」というのは、私たちの願いです。
ゲームや映画などで「記憶をなくして、もう一度やりたい」という声もよく聞きます。
心理学の研究者は、マンネリを防ぐ簡単な方法を見つけました。
オハイオ州立大学による研究報告です。[※]
実験にはポップコーンを食べるために、68人の参加者が呼ばれました。
そのうち、34人の参加者は通常通り、手で食べます。
残り半分の参加者は、箸を使ってポップコーンを食べました。
箸を使ってポップコーンを食べたグループは、楽しんだだけでなく、いつもよりポップコーンが美味しく感じたのです。
食べることに没頭する
マンネリ状態で食べるよりも、別のアイデアで食べた方が、ものごとに集中することができます。
集中すればするほど、食べ物の味を感じることができます。
これは「テレビを見ながら食事をすると、味を楽しむことができない」という現象と同じです。[※]
- 飲食店にテレビを置くことは、おそらく悪い施策です。
応用例
上記の実験内容は、応用することができます。
物事に集中できる体験を増やしてください。
引っ越しをしたばかりのトキメキは、完全には戻らないかもしれません。
しかし、部屋を模様替えしたり、ソファなどの家具を移動するだけで、新しい体験ができます。
通学路・通勤路を変えてみましょう。
これらは、脳の情報処理を増やすので、結果的に時間を遅く感じることができます。
そもそも「飽きないもの」がある
マンネリは「新しい環境に適応するためにある」と、冒頭で述べました。
様々なことに、慣れるためにマンネリがあるのです。
しかし、マンネリしないものがあります。
他人に与える行為は飽きない
以前の研究報告で「寄付が快楽を生む」ということが見つかっています。[※]
寄付や他人への奉仕は、与えた側の気分を良くします。
「情けは人の為ならず(自分に報いが返ってくる)」ということは、科学的にも正しかったのです。
さて、寄付や他人への奉仕は、もうひとつの特性があります。
それが「飽きない」ということです。
心理学の研究報告です。[※]
実験の参加者らは、毎日500円を渡されます。
片方のグループには、「好きなことに使って良いが、同じことに使う」という条件が加えられます。例えば「コーヒーに使うなら、毎日コーヒーに500円使うこと」という条件です。
そしてもう片方のグループは、個人や団体に500円を毎日寄付してもらいます。
この実験では、自分のために500円を使ったグループは、日ごとに幸福感・満足感が低下しました。
一方で寄付に使った人は、幸福感や満足感の低下が見られませんでした。
「他人に何かをしてあげる」ということは、幸福や快楽を得ることができます。
しかも、ずっと続くのですから「他人への奉仕」は、特別な行為です。
心理学の研究は、奉仕がマンネリしないとを見つけました。
寄付の心理は、以下の記事にあります。
最後に
マンネリには、ネガティブなイメージがあります。
しかし、マンネリは新しい環境に慣れるためのシステムです。
さらに、マンネリを上手く利用すれば、習慣化になります。
習慣化(ルーティン化)の方法は、以下の記事にあります。
逆に、悪い習慣を辞める方法は、以下の記事です。
大人よりも、子どもの方が鋭い感覚を持っていると言われることがあります。
何度も同じ経験をすると、脳は視覚や感覚を補完します。
例えば水族館で、アザラシの写真にアシカと書かれていた場合、視覚で判断している子どもの方が、間違いを見つけやすいのです。
大人になるほど、視覚を補完しているので、水族館が間違えることはないと思い込むのです。
マンネリ現象は、これに似ています。
マンネリを防ぐ手は、ものごとに集中できる環境を作ることです。
今までと別の方法で、マンネリ化した物事に挑めば、自然と新しい体験になります。
これが人生のスピードを遅める方法でもあります。