紙の地図は、絶滅の危機にあります。
あまりにスマホのナビが便利だからです。
このまま紙の地図は滅ぶのでしょうか?
心理学の研究によると、今のところは「いいえ」です。
紙の地図は、デジタルにないメリットがあるからです。
目次
紙の地図にあるメリット
地図とナビゲーションは、似てるようで違います。
ナビゲーションは、あなたが進む方向を指示してくれます。
これは受動的でラクです。
クルマの運転操作にも、集中できます。
一方で紙の地図を使うと、自ら考える必要があります。
さらに、空間認知能力も必要です。
誰もが最初に、頭の中で架空の3D地図を作ります。
この3D地図は、人それぞれで内容が違います。
ある人は、建物を重視するでしょう。
別の人は、川や山など、自然のものを重視するかもしれません。
これを認知地図と言います。[※]
認知地図は、頭の中の世界です。
そして、脳にある記憶の領域を使います。
したがって、何を重視して、どれぐらいの距離があるかは、人それぞれになります。
認知地図は、より深く、あなたの頭に入り込みます。
地理に詳しい人は、紙の地図を好む
心理学の研究によると、地理に詳しい人ほど、紙の地図を重視します。[※]
紙の地図は、認知地図に入り込みやすくなります。
したがって、移動するためのデジタル地図とは、性質が異なります。
より楽しむため、より深い知識を得るため、人は認知地図を好むようになるのです。
また、徒歩のナビゲーションにおいても、紙の地図は「楽しい経験」を提供します。
歩き旅やハイキングにおいて、自発的な計画と実行は、素晴らしい体験を追加してくれるからです。
旅行先で探索をするときは、紙の地図を使うと、より楽しむことができるのです。
感覚的な手がかり
紙の地図には、手触りがあります。
この感覚的なシグナルは、より認知地図を強化するのに役立ちます。[※]
これは、読んで覚えるよりも、書いて覚えることが優れているのと似ています。
また、紙の本は、電子書籍よりも学習効果が優れています。[※]
電子書籍と紙の本では、学習する「処理」が異なるのです。
紙の場合は、より広範囲に知識が吸収されます。
なぜ学習の処理方法が異なるかは不明ですが、紙の本には、場所の記憶が関係するかもしれません。
デジタル媒体では、モニターやタブレットの大きさによって、文章の場所が異なります。
それだけのことですが、場所としての記憶が抜け落ちることになります。
また、本の終盤で体験する「残りページが少ない厚みの感覚」というのがあります。
こうのような体験が関与するからでしょう。
いずれにしても、紙の地図を広げると、探索の楽しさを味わうことができます。
緊急時に重要な紙の地図
ハザードマップがデジタル地図しかなければ、それはハザードマップとして機能しません。
もちろん、目の不自由な人向けに、デジタル地図のハザードマップも役に立ちます。
デジタル媒体は、「使えないとき」を考える必要があります。
さすがに「GPS衛生が落ちる」とまでは言いませんが、ちょっとした登山でも、紙の地図は必要です。
ただし、紙の地図は更新に注意が必要です。
どんなに良い地図でも、中身が古ければ役に立ちません。
デジタル化はエコではない
製紙業界が植林をしているのは、あまり知られていません。[※]
デジタル化は、エコのように見えます。
しかし実際は、逆だったのです。
木を収穫するよりも、多くの木を育てています。
結論
紙の地図は、地理への興味を刺激します。
歴史や文化を知るのに、楽しみを与えてくれます。
しかし、そうは言っても危機的な状況です。
紙の地図は、デジタル地図を巻き替えすことはないでしょう。
これからも市場は衰退していきます。
それでも、なくすことはできません。
また、紙の地図にある良さを伝える人がいなけば、地理や歴史への興味が社会全体で薄れる可能性もあります。
そういった点では、紙の地図を残すことは必要と言えます。
心理学の研究は、そのような視点に、科学的な根拠を与えてくれます。